提督 ss クビ。 【艦これ・榛名SS】提督「助けてくれ」

#1 彼女達の後悔と提督の心

提督 ss クビ

18 ID:NuZSEvado 友提督「なぁ、やっぱりさ提督って大変じゃね?」 提督「あー、まぁな。 vip2ch. vip2ch. 97 ID:NuZSEvado 提督「駆逐艦の子って一緒にお風呂入らなきゃじゃん?」 友提督「は?」. 62 ID:NuZSEvado 提督「その後色々調べた結果……」 提督「子供でも普通異性の親とお風呂に入るのはほぼなくやっても小学校低学年までらしい……」 提督「し、知らなかった……」 提督「お、俺は今までとんでもないことをしていたんじゃ」ガタガタ 提督「よくよく考えたら駆逐艦でも成長している子もいたし……」ガタガタ 憲兵「おや、提督殿。 57 ID:NuZSEvado 提督「よし、やめよう!」 提督「今日からは皆一人で入ってもらうように……」 ガチャ!! 提督「ん?」 夕立「ぽーい!!」ピョーン 提督「うおっ!?ゆ、夕立か。 ビックリした……いきなり抱きついてくるなよ」 夕立「提督さん提督さん!夕立、頑張ってきたっぽい!」 提督「ん?」 夕立「ほらこれ!みてみて!」 提督「んー?……おお、出撃の報告書か」 夕立「夕立がMVPぽいっ!!」ムフー 提督「おおー、凄いな。 00 ID:NuZSEvado 夕立「提督さん、夕立お風呂に行きたいって言ったっぽい」ユサユサ 提督「お、おお。 54 ID:NuZSEvado 夕立「むー……でも夕立、一人じゃ髪の毛洗えないっぽい」 提督「お、それなら対策があるぞ……ほら!」スッ 夕立「?それなぁに?」 提督「これはな、シャンプーハットだ!」 夕立「……ふーん」 提督「いやー、昔は俺もこれに助けられたんだよなぁ……ほら夕立、これかしてやるから試しに一人で」 夕立「ぽーい!!」ビュン! 99 ID:NuZSEvado 夕立「ほら提督さん!やっぱり夕立、一人じゃお風呂に入れないっぽい!」ユサユサ 提督「い、いやしかしなぁ」 夕立「……ダメっぽい?」ウルウル 提督「ぐ!?……うぐぐ」 提督 そ、そんな捨てられた子犬みたいな目で俺を見ないでくれぇ…… 夕立 ショボーン 提督「……だけ」 夕立「ぽい?」ピクッ 提督「……今日、だけ。 63 ID:NuZSEvado 秋月「あの、司令?」 提督「なにかな?」 秋月「お風呂の準備は?」 提督「いや、入らないぞ?」 秋月「え」 提督「入りません」 秋月「」ガーン 提督「そ、そんなに落ち込むことじゃないだろ?」 秋月「し、しかし……秋月と一緒にお風呂に入るのが嫌と言うこと、ですよね?」グスッ 提督「あ!?い、いや!そうじゃなくてな!」 秋月「そ、それなら何故……」 提督「いやね、ほら。 入りません」 秋月「ど、どうしてもですか?」 提督「どうしてもです」 秋月「……分かりました。 しかし、司令。 95 ID:NuZSEvado 霞「ほら!早くしてよ!」 提督「い、いや、ちょ、ちょっと待って」 霞「あーもう!私がどうしてクズ司令と一緒にお風呂に……」 提督「……ん?」 霞「なにぼさっとしてるのよ!早く」 提督「か、霞。 も、もしかして俺とお風呂に入るのが嫌なのか?」オソルオソル 霞「えっ!?あ、それは……あ、当たり前でしょ!」 提督「そ、そっか……」 霞「あっ、ちが……で、でも仕方ないから!仕方なく一緒に入って」 提督「そうだよな!うん、イヤだよな!」 霞「へ」 提督「いやー、そうだよなぁ。 19 ID:NuZSEvado 提督「いやぁ、良かった良かった……ってあれ?霞?どうかしたのか?」 霞「……何でもないわよ!」 提督「そ、そう?」 霞「分かったわよ!一人で入ってくるから!」チラッ 提督「お、おう?いってらっしゃい」 霞「……ふんっ!」 バタンッ 提督「な、何で怒ってるんだ?」 提督「……まぁでもこれで霞は一人で大丈夫だな!」 提督「流石は霞だよなぁ!駆逐艦なのにしっかりしてるしな!」 提督「……でも、駆逐艦なんだよな。 88 ID:NuZSEvado 提督「……霞?何でまだ扉の前に?」 霞「え、あっ……こ、これから!これから行くところ!」 提督「え?でもさっき部屋を出てから大分時間が」 霞「だ、だからなによ?別に問題ないでしょ!」 提督「まぁ……」 霞「ふんっ!それじゃあ私は行くから!」チラッ 提督「……」 霞「……」チラチラ 提督「……なあ」 霞「な、なによ」 提督「やっぱり俺も一緒にお風呂に入るのはダメか?」 霞「……!な、なによ。 21 ID:NuZSEvado 提督「……自首しようかな」 提督「もうダメだよ俺……ついに自分からお願いしちゃったよ……」 提督「で、でもあれは仕方ないよな?霞が悪いよな?」 提督「……うん、そうだよ!俺は悪くねぇ!」 提督「つまり無罪!問題なし!」 提督「……」 提督「きょ、今日こそは、大丈夫、だよな?」 提督「ちゃんと駆逐艦の皆に集会で言ったし……流石にもう平気だよな?」 コンコン 提督「ん?誰だ?」 加賀「提督、失礼します」 提督「加賀か。 64 ID:NuZSEvado 加賀「……なので、ここの編成は五航戦の子を入れるのがよろしいかと」 提督「ほう?瑞鶴をか?」 加賀「なにか?」 提督「いや、まさかお前が瑞鶴を推薦するとは思ってなくてな……認めてたのか」 加賀「そうね、彼女は私たちのなかでもかなりの力を持っているわ」 提督「ふぅん、ならなんでいつもあいつのことを」 加賀「あの子は褒めたら調子に乗るわ。 あの程度の扱いがちょうどいいのよ」 提督「あー……なるほどな」 加賀「それではお話はおしまいね。 71 ID:NuZSEvado 加賀「なにか?」クビカシゲ 提督「なにその顔、何でこっちがおかしな反応をしたみたいな反応してるの?」 加賀「えぇ、そうね。 おかしな反応をしたわ」 提督「いやいやいや……前から思ってたけど流石におかしいわ。 お前と風呂なんて」 加賀「そう?でも私一人では髪の毛を洗えないのだけど」 提督「うんその時点でおかしいんだわ……」 加賀「馬鹿な。 55 ID:NuZSEvado 提督「……ならせめて赤城と入ってくれよ」 加賀「あら、提督は赤城さんと三人でお風呂に入りたいの?別にいいけれど」 提督「よくねぇよ!なんで俺入ること前提なんだよ!しかもさらっとお前も入ってるし!」 加賀「……なら私の髪は誰が洗ってくれるの?」 提督「シャンプーハット貸すから自分で洗ってくれ」 加賀「そんな子供が付けるようなもの、恥ずかしくて付けられません」 提督「一人で頭を洗えない時点で子供以下だよ……」 加賀「……頭にきました。 55 ID:NuZSEvado 提督「ふぅ……なんだかんだあったけど皆一人で入ってくれるようになったなぁ」 提督「……うん、いいことなはずなんだけどいざ終わってみると少し寂しい気がするな」 提督「これが父親の気持ちなんだろうか」 提督「……」 提督「……まぁ、いいか。 46 ID:NuZSEvado 提督「男湯なくね?」 提督「風呂!」 おしまい.

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[B! 艦隊これくしょん] 提督「提督辞めようとした結果www」|エレファント速報:SSまとめブログ

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18 ID:NuZSEvado 友提督「なぁ、やっぱりさ提督って大変じゃね?」 提督「あー、まぁな。 vip2ch. vip2ch. 97 ID:NuZSEvado 提督「駆逐艦の子って一緒にお風呂入らなきゃじゃん?」 友提督「は?」. 62 ID:NuZSEvado 提督「その後色々調べた結果……」 提督「子供でも普通異性の親とお風呂に入るのはほぼなくやっても小学校低学年までらしい……」 提督「し、知らなかった……」 提督「お、俺は今までとんでもないことをしていたんじゃ」ガタガタ 提督「よくよく考えたら駆逐艦でも成長している子もいたし……」ガタガタ 憲兵「おや、提督殿。 57 ID:NuZSEvado 提督「よし、やめよう!」 提督「今日からは皆一人で入ってもらうように……」 ガチャ!! 提督「ん?」 夕立「ぽーい!!」ピョーン 提督「うおっ!?ゆ、夕立か。 ビックリした……いきなり抱きついてくるなよ」 夕立「提督さん提督さん!夕立、頑張ってきたっぽい!」 提督「ん?」 夕立「ほらこれ!みてみて!」 提督「んー?……おお、出撃の報告書か」 夕立「夕立がMVPぽいっ!!」ムフー 提督「おおー、凄いな。 00 ID:NuZSEvado 夕立「提督さん、夕立お風呂に行きたいって言ったっぽい」ユサユサ 提督「お、おお。 54 ID:NuZSEvado 夕立「むー……でも夕立、一人じゃ髪の毛洗えないっぽい」 提督「お、それなら対策があるぞ……ほら!」スッ 夕立「?それなぁに?」 提督「これはな、シャンプーハットだ!」 夕立「……ふーん」 提督「いやー、昔は俺もこれに助けられたんだよなぁ……ほら夕立、これかしてやるから試しに一人で」 夕立「ぽーい!!」ビュン! 99 ID:NuZSEvado 夕立「ほら提督さん!やっぱり夕立、一人じゃお風呂に入れないっぽい!」ユサユサ 提督「い、いやしかしなぁ」 夕立「……ダメっぽい?」ウルウル 提督「ぐ!?……うぐぐ」 提督 そ、そんな捨てられた子犬みたいな目で俺を見ないでくれぇ…… 夕立 ショボーン 提督「……だけ」 夕立「ぽい?」ピクッ 提督「……今日、だけ。 63 ID:NuZSEvado 秋月「あの、司令?」 提督「なにかな?」 秋月「お風呂の準備は?」 提督「いや、入らないぞ?」 秋月「え」 提督「入りません」 秋月「」ガーン 提督「そ、そんなに落ち込むことじゃないだろ?」 秋月「し、しかし……秋月と一緒にお風呂に入るのが嫌と言うこと、ですよね?」グスッ 提督「あ!?い、いや!そうじゃなくてな!」 秋月「そ、それなら何故……」 提督「いやね、ほら。 入りません」 秋月「ど、どうしてもですか?」 提督「どうしてもです」 秋月「……分かりました。 しかし、司令。 95 ID:NuZSEvado 霞「ほら!早くしてよ!」 提督「い、いや、ちょ、ちょっと待って」 霞「あーもう!私がどうしてクズ司令と一緒にお風呂に……」 提督「……ん?」 霞「なにぼさっとしてるのよ!早く」 提督「か、霞。 も、もしかして俺とお風呂に入るのが嫌なのか?」オソルオソル 霞「えっ!?あ、それは……あ、当たり前でしょ!」 提督「そ、そっか……」 霞「あっ、ちが……で、でも仕方ないから!仕方なく一緒に入って」 提督「そうだよな!うん、イヤだよな!」 霞「へ」 提督「いやー、そうだよなぁ。 19 ID:NuZSEvado 提督「いやぁ、良かった良かった……ってあれ?霞?どうかしたのか?」 霞「……何でもないわよ!」 提督「そ、そう?」 霞「分かったわよ!一人で入ってくるから!」チラッ 提督「お、おう?いってらっしゃい」 霞「……ふんっ!」 バタンッ 提督「な、何で怒ってるんだ?」 提督「……まぁでもこれで霞は一人で大丈夫だな!」 提督「流石は霞だよなぁ!駆逐艦なのにしっかりしてるしな!」 提督「……でも、駆逐艦なんだよな。 88 ID:NuZSEvado 提督「……霞?何でまだ扉の前に?」 霞「え、あっ……こ、これから!これから行くところ!」 提督「え?でもさっき部屋を出てから大分時間が」 霞「だ、だからなによ?別に問題ないでしょ!」 提督「まぁ……」 霞「ふんっ!それじゃあ私は行くから!」チラッ 提督「……」 霞「……」チラチラ 提督「……なあ」 霞「な、なによ」 提督「やっぱり俺も一緒にお風呂に入るのはダメか?」 霞「……!な、なによ。 21 ID:NuZSEvado 提督「……自首しようかな」 提督「もうダメだよ俺……ついに自分からお願いしちゃったよ……」 提督「で、でもあれは仕方ないよな?霞が悪いよな?」 提督「……うん、そうだよ!俺は悪くねぇ!」 提督「つまり無罪!問題なし!」 提督「……」 提督「きょ、今日こそは、大丈夫、だよな?」 提督「ちゃんと駆逐艦の皆に集会で言ったし……流石にもう平気だよな?」 コンコン 提督「ん?誰だ?」 加賀「提督、失礼します」 提督「加賀か。 64 ID:NuZSEvado 加賀「……なので、ここの編成は五航戦の子を入れるのがよろしいかと」 提督「ほう?瑞鶴をか?」 加賀「なにか?」 提督「いや、まさかお前が瑞鶴を推薦するとは思ってなくてな……認めてたのか」 加賀「そうね、彼女は私たちのなかでもかなりの力を持っているわ」 提督「ふぅん、ならなんでいつもあいつのことを」 加賀「あの子は褒めたら調子に乗るわ。 あの程度の扱いがちょうどいいのよ」 提督「あー……なるほどな」 加賀「それではお話はおしまいね。 71 ID:NuZSEvado 加賀「なにか?」クビカシゲ 提督「なにその顔、何でこっちがおかしな反応をしたみたいな反応してるの?」 加賀「えぇ、そうね。 おかしな反応をしたわ」 提督「いやいやいや……前から思ってたけど流石におかしいわ。 お前と風呂なんて」 加賀「そう?でも私一人では髪の毛を洗えないのだけど」 提督「うんその時点でおかしいんだわ……」 加賀「馬鹿な。 55 ID:NuZSEvado 提督「……ならせめて赤城と入ってくれよ」 加賀「あら、提督は赤城さんと三人でお風呂に入りたいの?別にいいけれど」 提督「よくねぇよ!なんで俺入ること前提なんだよ!しかもさらっとお前も入ってるし!」 加賀「……なら私の髪は誰が洗ってくれるの?」 提督「シャンプーハット貸すから自分で洗ってくれ」 加賀「そんな子供が付けるようなもの、恥ずかしくて付けられません」 提督「一人で頭を洗えない時点で子供以下だよ……」 加賀「……頭にきました。 55 ID:NuZSEvado 提督「ふぅ……なんだかんだあったけど皆一人で入ってくれるようになったなぁ」 提督「……うん、いいことなはずなんだけどいざ終わってみると少し寂しい気がするな」 提督「これが父親の気持ちなんだろうか」 提督「……」 提督「……まぁ、いいか。 46 ID:NuZSEvado 提督「男湯なくね?」 提督「風呂!」 おしまい.

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[B! あとで読む] 夕張「え、提督って高専卒なんですか」 提督「何だ悪いか」 : あやめ速報

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この鎮守府はとても歪んでいた。 多くの戦果を挙げながら、艦娘達には一隻も轟沈はない。 それには秘密があった。 「この作戦も!前回も!ご自身を囮にする殲滅戦!危険です!」 そう。 この鎮守府の多大な戦果の秘訣は、提督の自身の命すら駒の様に扱う、自爆覚悟の殲滅戦。 敵の深海棲艦は提督という、最大の獲物に群がる。 提督というエサに集まった敵を艦娘の集中攻撃によって撃破、殲滅するという狂気染みた作戦だった。 目の前の提督はそれがどうしたという表情をとる。 いや、恐らくとったのだろう。 遮光カーテンにより窓からの明かりは室内には入らない。 時刻は昼過ぎだが、提督の執務机に設置された、電気スタンドと、長門の立つ位置の頭上の明かりだけだ。 執務室は薄暗い。 最も、部屋が明るくても長門には、提督の顔を真っ直ぐ見詰める覚悟が無かった。 長門自身のかつての罪の重さから、彼を直視出来ないのだ。 提督は抑揚の無い声で長門に言う。 「気にするな、俺の命なんぞ軽い物だ。 誰も傷つかず、挙げる戦果は大きい。 こんな楽な作戦、使わない手は無いだろう。 」 あまりにも自身の命を軽視する提督の発言に、長門は喰って掛かる。 」 長門のセリフに被せるように提督は言い放つ。 長門は提督の発言に顔を伏せる。 背筋を冷たい汗が落ちる。 提督は続ける。 「確か「提督など居ても居なくても変わらん!忌々しい!」だったかな?いや〜、まさか味方と信じた艦娘に砲撃までされるとはな!流石は41センチ砲だよ!でもな、寒くなると君の砲弾の破片の刺さった箇所が酷く痛むんだよ。 」 まるで楽しい昔話の様に、提督は言い放つ。 長門は何も言えない。 言えなくなった。 」 長門はすかさず提督に謝罪しようとするが、提督は手を挙げ中断させる。 「別に謝って欲しい訳じゃないさ。 ただ、俺は使える物は何でも使うだけだよ?例え自分自身でもね。 」 そう言って笑う提督の顔を執務机の灯りが照らす。 その顔は左のこめかみから左頬にかけての、酷い裂傷の痕があった。 [newpage] 「吹雪ちゃん、早くお昼ご飯に行くっぽい!」 「だ、大丈夫だよ〜夕立ちゃん。 まだ時間ならあるから。 」 駆逐艦寮の廊下を夕立、吹雪がはしゃぎながら歩く。 訓練を終えた彼女達二人は、お昼ご飯を食べに食堂へと急ぐ。 食堂は鎮守府の本館施設内にあり、駆逐艦寮からは渡り廊下を過ぎた先にある。 本館に入り、曲がり角を突き当たった先が食堂だ。 だが、吹雪と夕立は曲がり角を過ぎる直前に現れた人物を前に、慌てて顔を伏せ、道を空ける。 白い軍帽に白い軍服。 司令官だ。 だが、彼は彼女達を一切気にする素振りも見せずに執務室へと戻っていく。 しかし、そんな無愛想な司令官相手にすら、吹雪と夕立は顔を伏せながらの敬礼をする。 全ては彼女達が悪いのだから。 [newpage] 以前の鎮守府は提督の優しい笑顔と、艦娘思いの作戦から、笑い声が絶えなかった。 皆、提督を信頼し、提督も彼女達艦娘を大切に扱った。 しかし、事態は急変する。 」 「提督さぁー、魚雷で吹っ飛ばされたくなかったら近寄んないでくれないかなー」 「テートクー、何時になったら辞めるんデスカー?」 元々口の悪い艦娘のみならず、提督LOVE勢の金剛や榛名まで提督に対して暴言を吐く様になった。 次第に暴言だけでなく、暴力も加わる様になった。 通路を歩いていれば、跳び蹴り、過ぎ去りざまに殴るなど酷くなっていった。 提督はみんなの急激な変化に戸惑いながらも、問題を解決しようとした。 慌てふためき、弱っていく様は滑稽にすら思えた。 そしてある日、艦娘達は提督を司令室に呼び出した。 艦娘達と仲直り出来るならと、提督は何の疑いも持たずに司令室に向かった。 提督が司令室に入った事を確認した艦娘達は建物に対し攻撃を開始した。 空母勢は爆撃を、他の艦種達は砲撃を浴びせた。 瓦礫の山と化す司令室。 しかし、提督は九死に一生を得た。 全身に火傷や裂傷、骨折をしながらも一命は取り留めた。 万一の敵の攻撃の為、司令室は一番強固に出来ていたのが幸いした。 だが、敵に対する備えが味方からの攻撃を凌いだとは笑い話にもならなかった。 しばらくして、原因は解明された。 深海棲艦が艦娘に対する特殊電波を出したらしい。 この電波攻撃は艦娘を一種の洗脳状態にし、自身の大切なモノを憎むようになるというモノだった。 直ぐに妖精さんや大本営の技術者によって対策が取られ、事態は収束に向かった。 だが、傷跡は残った。 [newpage] 正気に戻った艦娘達は、全員が発狂するほど後悔した。 あれほど慕った提督を殺しかけたのだ、当然だろう。 大本営も、ここまでの事件になったからには艦娘全員の解体処分も止む無し!との通達を出す覚悟だった。 しかし、それは却下された。 何と被害者本人である提督が処分を差し止めたのだ。 艦娘達は只々提督に対する感謝と自責の念しか無かった。 こうなっては全員で提督に謝ろう! そして許しを乞おう。 提督が軍事病院から鎮守府へと戻って来た。 送迎の車から提督が降りる。 艦娘達は鎮守府正面に勢揃いし、出迎える。 しかし、提督の姿を見た艦娘達は息を飲んだ。 右耳は先が欠け、左腕は二の腕の途中から先が無く、顔には左のこめかみから頬にかけての裂傷が残っている。 あれでは軍服に包まれた肉体にも、言葉に表せない程の傷が有るだろう。 まず秘書艦であった長門が代表して、提督に謝罪する。 長門に続いて他の艦娘達も謝罪した。 しかし、それに対する提督の反応は、 「別に大した事じゃない。 ただの男がくたばり損なっただけだ。 」 と、言い放つと執務室に歩いて行ってしまった。 艦娘達は、何事も無かった様に行ってしまった提督に対して、どう接して良いのか分からなかった。 [newpage] 皆、提督に褒めて貰いたくて、戦闘では頑張った!大破しながらも姫級を沈めた!しかし、返ってきたのは、 「大破なんかするな。 」 の、一言だった。 始めは心配してくれてるのかと思ったが、淡々と 「後の作戦に支障が出る。 」 提督の冷たい視線。 この時、艦娘達は理解した。 彼は、ただ自分達に関心が無いのだと。 好きの反対は嫌いでは無く無関心。 この言葉は残酷だが的を得ていた。 「テ、テートクはケッコンカッコカリには興味は無いのデスカ?」 「悪いな、左腕が先から無いんだ。 指輪なんぞ着けられん。 」 「た、玉子焼き作ってきたの。 た、食べりゅ?」 「悪いな、玉子焼きは入院中の病院食を思い出す。 下げてくれ。 」 「て、提督。 」 艦娘達はどうして良いのか分からなくなった。 別段、酷い作戦や遠征を押し付ける訳では無い。 極めてクリーンな艦隊運営だった。 罵倒された方がまだ良かった。 殴ってくれても良かった。 提督は只々関心を持たなかった。 しかし、転機が訪れる。 ある日、榛名が敵戦艦と凄まじい砲撃戦を行った。 その時の榛名は、何処かおかしかった。 提督に相手にされず、自身の存在すら否定されたようで、どうせならばと敵戦艦と刺し違えるつもりで戦いに臨んだのだろう。 提督の撤退命令を無視し、単身敵艦と殴り合いの砲撃戦を行った。 しかし、危機一髪の所で僚艦であった比叡の援護により沈まずに済んだ。 しかし、榛名の行動は提督を幾らか動かしたのだろう。 鎮守府に帰投すると、 「撤退しろと言ったのに、どういうつもりだ!」 あれ程淡々と冷めていた提督が、榛名の轟沈未遂に声を荒げたのだ。 続いて、 「比叡!修復剤を使っても構わん! 入渠させろ!榛名の負傷を癒せ!」 提督自ら、艦娘の名を呼んだのだ。 名指しで呼ばれた比叡は勿論、榛名も嬉しさで目に涙が滲んでいた。 (元々優しいお方なのだ。 もう少し時間を掛ければきっと元通りになれる筈だ。 ) 艦娘達は小さな希望を見出した気がした。 [newpage] しかし、彼女達の考えは裏切られる事になる。 深海棲艦がある泊地に集結しつつある、という報が届いたのだ。 大本営より早急に撃破せよ!と、任務が降りた。 提督は秘書艦の長門を執務室に呼んだ。 「明日の日の出、深海棲艦はある方向を一斉に目指す。 此方は艦隊を二つに分け、待ち伏せ、十字砲火を浴びせろ」 というものだった。 長門は尋ねる。 「明日の日の出?一斉に?それは何故ですか?」 長門の問いは最もだ。 しかし、提督からの返事は 「必ず来る。 信用出来んか?」 出来ないなどと言える訳がない! 長門はただ了解と敬礼すると、執務室を出た。 」 長門の疑問は尽きないが、自分達は提督の信頼を得る為に尽くすしかない。 そして、日の出。 長門達の二つに分けられた艦隊は敵艦隊が一斉にある方角へと移動をするのを確認した。 後は行動に移すのみ! 全艦隊!攻撃開始!敵を撃滅しろ!」 二つの艦隊は攻撃を開始する。 戦艦、空母、重巡軽巡、駆逐艦。 全ての攻撃が交差する。 この待ち伏せ攻撃は完全に成功した。 敵艦隊は全く反応出来ず沈んでいった。 [newpage] だが、空母赤城の飛ばした攻撃隊の一機が小型の高速艇を発見する。 ボロボロに破損、汚れてはいるが、人間用の高速艇だ。 まだ動いている。 赤城は攻撃隊からの報告を受けて、長門に知らせる。 爆煙と砲煙の中から出てきたのは、軍用の高速艇だった。 そして艦娘達は中から出てきた人物に驚愕する。 「どうやら敵は全滅したようだな。 此方は一切被害なし。 大成功じゃないか。 」 高速艇から顔を出したのは提督だった。 白い軍服は黒く煤汚れていたが、怪我は無いようだ。 それに対しての返答は、 「俺が奴らを釣るエサになった。 そして、お前達の攻撃地点まで誘導した。 それだけだ。 」 いつものようにただ淡々と提督は言ってのける。 その直後、多くの駆逐艦や軽空母達が腰を抜かしてしゃがんでしまう。 そしてある者は青ざめ、幼い駆逐艦達は泣き出した。 それはそうだ。 自分達で提督を深海棲艦諸共殺しかけたのだ。 一部の戦艦や空母達が提督に食って掛かる。 単純な話だ。 」 と。 そして、艦娘を見渡し続ける。 「『あんな奴でも役に立つ時ってあるのかしら?』だったかな?誰のセリフか忘れたが、どうかな?役に立っただろ?」 艦娘達はここでようやく理解した。 彼は自分達に関心が無いんじゃない! この世の全て、自分自身にすら関心が無いのだ、と。 [newpage] 何の犠牲も出さずに敵艦隊を全滅させた提督に対し、大本営は勲章を授けた。 しかし、提督は執務机の引き出しにそのまま放り込んだ。 提督は軍人としての名誉すら、必要としていなかった。 それからも作戦は続いた。 提督の作戦自体は単純だ。 敵に対し、提督が自分達の近くの海域を通過するらしい。 という情報を流せば良いだけだ。 面白いぐらいに喰い付く。 」 ある者は砲を向けるのを涙を流しながら行い、 「ぜ、絶対にあの方には当てられない! タ、タイミングを見計らってやれば、だ、大丈夫。 」 ある者は自身に言い聞かせる様にブツブツと呟く。 何度も提督には、艦娘全員で思いとどまる様に嘆願した。 だが、提督の返事は決まって 「『役に立つ時がくるのかしら、このクズ!』だったかな?霞。 どうだい?俺は役に立っているだろう?」 それを聞いて霞は泣き崩れ、艦娘達は全員が黙る。 かつての自分達の発した言葉が、そのまま返ってくる。 提督をここまで追い詰めたのは自分達だ。 その中で、提督に引き合いに出された霞の瞳は、薄暗く染まりつつあった。 」 霞はフラフラと、港へと向かう。 茫然とする艦娘達は、霞一人居なくなった事に気付かない。 空に暗い雲が広がりつつあった。 [newpage] カーテンで仕切られた薄暗い執務室。 この部屋の主である提督はかつての戦時記録を見ていた。 手探りで始めた艦隊運営。 失敗を繰り返しながらも、敵泊地を攻め落とした。 提督の持つ記録ファイルには、祝勝会を開いた際の写真が収められていた。 写真の中の自分は艦娘達に囲まれ幸せそうに笑っている。 今の自分はもう笑い方すら忘れてしまった。 彼自身、彼女達が悪い訳では無い事は分かっている。 全ては敵の策略であると。 」 すると、執務室のドアを慌ただしく叩く音がする。 返事をすると駆逐艦の朝潮と秘書艦の長門がいた。 二人の顔色は蒼白だ。 何かがあったらしい。 」 普段の朝潮とは違い、今の姿は儚く、今にも倒れそうなほど動揺している。 提督はいつもの冷めた口調に戻る。 「何かあったのか?報告は的確に行え。 」 長門が提督の目を見ながら報告する。 「先ほどから霞が見当たりません。 」 長門の報告に提督は窓へと近付くと、 カーテンを開けて空を見る。 黒い雲が広がりつつあった。 提督の長年の海での生活からこの天気は荒れる!と、直感が告げている。 「提督!早急に捜索部隊の派遣許可を!」 長門は提督の背に声をかける。 朝潮も只々、頭を下げて懇願する。 「お願いします。 霞を!霞を助けて下さい!」 提督は瞑目する。 俺が霞を追い詰めたのか、当然か。 あんな態度を取っていれば、耐えられない奴だって出てくる。 何故だろう、何も満たされない。 艦娘をジワジワと追い詰めた自覚があり、達成された。 だが、無性に自分自身に腹が立つ。 ふと、机に置いたままになっていた記録ファイルが目に入る。 祝勝会の写真には、姉妹艦に囲まれている霞が写っていた。 [newpage] 『何やってるのよ?執務記録ならこの棚よ!ホントにノロマなんだから。 』 『し、仕方ないだろ。 こういった細かい作業、元々得意じゃねーんだよ。 』 『言い訳をしない!このクズ! どこの鎮守府でもこなしてる事よ! さっさと終わらせなさい!』 『わ、わかってるよ。 それに霞にも手伝って貰ってるし、すぐに終わるだろ。 ありがとう、いつも助かってるよ』 『べっ、別にたまたまヒマだっただけだしっ!それにノロマのアンタじゃいつまで経っても終わらないでしょっ! 仕方なくよ、仕方なく!』 『はいはい。 』 『返事は一回!』 提督は海を見つめる。 波が少し荒れてきていた。 「提督!どうかお願い致します!」 長門と朝潮は揃って頭を下げる。 長門は提督の返事を待った。 そして、 提督は目を見開いた。 「長門っ!空母を始めとした、艦載機を飛ばせる者を捜索に当たらせろっ! 航空戦艦も呼び出せっ!広範囲を捜索しろっ!」 提督の言葉に長門は安堵し、朝潮は涙ぐむ。 「了解した!直ちに艦隊を派遣する!」 提督の霞捜索が発令され、艦娘達は行動を開始する。 提督は館内放送で呼びかけた。 「霞が行方不明になった。 みんな、すまない!力を貸してくれ!」 緊急事態なのだが、皆は何故か泣きながら笑っていた。 自分達の提督が戻ってきたと。 [newpage] 「コンナ所ニ一人デ来ルナンテ、ヨホド自信ガアルノカ馬鹿ナノカ。 」 霞の目の前には、戦艦棲姫が蔑みの籠った視線を向けて立ち塞がっている。 霞は既に満身創痍と言っていいほどの損傷を負っていた。 主砲は曲がり、魚雷も撃ち尽くした。 最早、立っているのも不思議なくらいだ。 霞に砲を向けて薄く笑う。 霞は目を閉じ、誰に聞かせる訳でもなく「ゴメンなさい」と、呟いた。 すると霞の眼前で、爆発音がした。 霞はそっと目を開くと、戦艦棲姫が忌々しげにある方向を睨みながら、肩を抑えて呻いていた。 霞は視線の先を見る。 其処には赤城に加賀、長門に朝潮、摩耶と日向もいた。 摩耶が叫ぶ。 「ウチのモンに好き勝手やってくれたみてーじゃねぇか!ブッ殺されてーか!」 「鎧袖一触よ。 」 「一航戦の誇り、お見せします!」 「殴り合いなら私を忘れて貰っては困るな!」 「霞!今、助けるからね!」 「航空火力艦の力、見せてやる。 」 ここで完全に攻守が逆転した。 [newpage] 長門達は損傷の酷い霞を曳航しながら、帰途についていた。 霞は勝手な事をしたと落ち込んでいる。 そこに摩耶が声を掛ける。 「クヨクヨすんなよ。 そもそもお前を探せって言ったの、提督だぜ? 心配こそすれ、嫌ってなんかいねーよ。 」 長門も同意する。 「そうだ。 私と朝潮が捜索を依頼した時、提督自身、自分の行いを悔やんでいた。 大丈夫。 今の提督はかつての提督だ。 」 霞は顔を上げ、 「本当に?」 摩耶はニヤッと笑うと、鎮守府を指差した。 「見てみろよ。 港にでかい図体で、心配そうにウロウロしてやがるから。 」 [newpage] 「提督さん!夕立MVP取ったっぽい! 褒めて褒めて〜。 」 執務室で夕立が提督に甘えている。 「おう!報告書読んだぞ〜。 よくやったな〜。 」 夕立を膝に座らせ頭を撫でる。 本当に犬のようである。 霞を連れ帰った艦隊を、提督は出迎えた。 そして、霞に深々と頭を下げて謝罪した。 そして全員を会議室に集めると、皆の前でも頭を下げた。 『すまなかった。 ガキのようにいじけていた。 艦娘達も自分達もと謝り、謝罪合戦になりかけた所で、流石に止めた。 それから提督は、かつての提督へと戻った。 「資材の減りがヤケに早いな?長門、赤城と加賀にそれとなく注意しといてくれ。 多分あいつらだ。 え〜と、次は何々?『夜戦をもっと増やせ!』。 匿名にしても誰が書いたかすぐ分かるな。 神通に川内をシメるように言っといてくれ。 『カレーを作りました。 食べに来て下さい。 比叡』却下だ!却下!誰だ厨房に比叡を入れたの! 妖精さんに頼んで鍵を掛けられるようにしといただろ? えっ、壊して入った?不法侵入じゃねーか!」 提督は集められた艦娘達の要望書へと目を通していた。 そして独りごちる。 「最近やたらと、要望書が増えた気がするな」 それもその筈。 艦娘達は今まで提督に構ってもらえなかった分、やたらと甘えてくるのだ。 最も、提督も本気で嫌がっているワケでもない。 「ヘーイ!テートクー!tea timeにしまショー!」 金剛がtea セットを持ちながら執務室に入ってきた。 「お、もうそんな時間か。 喉も渇いたし、お願いするよ。 」 金剛は歌を口ずさみながら、紅茶を淹れてくれる。 提督は以前の殺伐とした鎮守府の雰囲気よりも、コッチの方が良いなと実感していた。 今も夕立を膝に乗せながら、長門を秘書に、そして金剛に紅茶を淹れて貰う。 幸せな時間であった。 すると、ドアを誰かがノックする。 返事をすると、大本営との連絡要員でもある大淀がいた。 「提督、大本営より査察官殿がお見えになっております。 お通ししてくれ。 」 執務室に少佐の階級章を付けた将校が入ってきた。 「大本営より来ました。 」 提督はソファーに対面する形で向かい合う。 後ろには秘書艦の長門、夕立、大淀、そして査察官の分の紅茶を淹れた金剛が控えた。 要約すると、この鎮守府の様子を見てくる様に。 と派遣されたらしい。 「ですが、安心致しました。 ここに来るまでの間に艦娘達を見かけましたが、皆、楽しそうに過ごしていたので問題無さそうですね。 」 提督はやはり来たかと思いながらも表情には出さない。 「ええ。 皆とても素晴らしい者達ですから助かっていますよ。 それと問題無いとは?」 其処で査察官も続ける。 「いえ、万一艦娘達との関係修復が難しい様で有れば、直ちに提督を保護せよとの命が降りていましたが、どうやら取り越し苦労だったようですね。 」 「何と!そうでしたか。 ですが心配は要りません。 彼女達との関係は良好ですしね。 」 提督の返事に査察官も安心したようだ。 その表情は青ざめて顔色が悪い。 」 査察官は提督の後ろに視線を向けている。 提督は訝しげに振り向くが、背後には長門に夕立、金剛に大淀がいるだけだ。 皆、提督にニッコリと笑みを向けてくる。 かわいい。 「査察官殿。 大丈夫です。 お気遣いなく。 そ、そろそろ失礼致しますっ!」 来訪してからニ十分も経っていない。 どういう事だ? 「えっ、もうそろそろ昼食の時間ですから良ければ召し上がっていっては? 我が鎮守府の鳳翔の腕は並みの料理人以上ですよ。 」 しかし、査察官は慌てて返事をする。 「いっ、いえ、此方も様々な案件を抱えてましてっ! これで失礼させて頂きますっ!」 キョトンとした提督を尻目に、査察官は部屋のドアへと向かう。 早く此処から逃げたくて仕方ない。 しかし、 「では提督。 私がお見送りしてきますね。 」 声を上げたのは大淀だ。 それに対して提督は、 「ああ、頼むよ。 では、査察官殿。 お気を付けて。 」 査察官は叫びたくなった。 [newpage] 執務室から正面玄関までの道のりを査察官は大淀の後に続いて歩く。 あの時。 提督と対面で座っていた時。 自分が提督を保護するという発言をした瞬間、提督の後ろに控えていた艦娘達が凄まじい殺意の籠った視線を向けてきた。 あの瞬間に自分は死を覚悟した。 大淀は此方を見ずに話し出す。 」 そう言って大淀は此方を振り向く。 暗く濁った瞳。 査察官は恐ろしくて仕方なかった。 冷や汗が噴き出る。 気付けば通路には自分と大淀しかいない。 しかも、来た時には外から聞こえていた駆逐艦の子達の声がしない。 静かだ、不安になるくらいに。 しかし、背後から何か視線を感じる。 ゆっくりと後ろを振り向くと、 ズラリと艦娘達が並んで自分を見ていた。 誰もが皆、濁った瞳をしている。 査察官は叫び声をあげそうになりながらも、後ろへと後ずさる。 査察官の肩に手が置かれた。 「大本営には、上手く、言っておいて下さいね。 」 査察官は何度も頭を振り了承した。 「それでは、道中お気をつけて。 」 艦娘達に見送られ査察官は正面玄関から逃げる様に早足で駆け出す。 鎮守府前に駐車中の車の後部座席に飛び込んだ。 運転手として待機していた武官が驚いて運転席から振り向く。 査察官は車の窓から鎮守府本館を見やる。 口元に笑みを浮かべている者もいるが、目は笑っていない。 その後、査察官は逃げる様に鎮守府から去って行った。 査察官は思った。 「私はまだ生きていたい。 死にたく無い。 」 「しかし、査察官って仕事も忙しないんだな。 あんなにバタバタして。 」 提督は金剛が淹れてくれた紅茶を飲みながら、溜息を吐く。 「まあまあ提督。 それよりそろそろ昼食にしましょう。 」 「ソウネー、テートク!今日は鳳翔の魚料理がオススメらしいネー!」 そう言いながら、金剛は提督の右腕にくっついてくる。 「金剛さん、ズルいっぽい! 夕立も提督さんと一緒っぽい!」 「こらこら。 歩きにくいだろ? まだ昼休みは時間あるから急がなくても大丈夫だ。 」 提督はぷりぷりと怒りだした夕立をあやしながら、食堂へと向かう。 三人の後に、秘書艦の長門が続いて執務室を後にする。 長門は前を歩く提督の背中を見つめながら呟く。 「彼は我々の導き手。 」 腕を組んで歩く金剛は、 「何処にも行かせないネー、テートク。 」 「「「もし彼に手を出すのなら、絶対に許さない。 海の藻屑に変えてやる。 」」」 それぞれ3人共、暗く濁った瞳をしながら歩いていく。 いや、彼女達だけでなく、この鎮守府の艦娘達は誰もが同じ目をしていたのだった。 この鎮守府はとても歪んでいた。 多くの戦果を挙げながら、艦娘達には一隻も轟沈はない。 それには秘密があった。 「この作戦も!前回も!ご自身を囮にする殲滅戦!危険です!」 そう。 この鎮守府の多大な戦果の秘訣は、提督の自身の命すら駒の様に扱う、自爆覚悟の殲滅戦。 敵の深海棲艦は提督という、最大の獲物に群がる。 提督というエサに集まった敵を艦娘の集中攻撃によって撃破、殲滅するという狂気染みた作戦だった。 目の前の提督はそれがどうしたという表情をとる。 いや、恐らくとったのだろう。 遮光カーテンにより窓からの明かりは室内には入らない。 時刻は昼過ぎだが、提督の執務机に設置された、電気スタンドと、長門の立つ位置の頭上の明かりだけだ。 執務室は薄暗い。 最も、部屋が明るくても長門には、提督の顔を真っ直ぐ見詰める覚悟が無かった。 長門自身のかつての罪の重さから、彼を直視出来ないのだ。 提督は抑揚の無い声で長門に言う。 「気にするな、俺の命なんぞ軽い物だ。 誰も傷つかず、挙げる戦果は大きい。 こんな楽な作戦、使わない手は無いだろう。 」 あまりにも自身の命を軽視する提督の発言に、長門は喰って掛かる。 」 長門のセリフに被せるように提督は言い放つ。 長門は提督の発言に顔を伏せる。 背筋を冷たい汗が落ちる。 提督は続ける。 「確か「提督など居ても居なくても変わらん!忌々しい!」だったかな?いや〜、まさか味方と信じた艦娘に砲撃までされるとはな!流石は41センチ砲だよ!でもな、寒くなると君の砲弾の破片の刺さった箇所が酷く痛むんだよ。 」 まるで楽しい昔話の様に、提督は言い放つ。 長門は何も言えない。 言えなくなった。 」 長門はすかさず提督に謝罪しようとするが、提督は手を挙げ中断させる。 「別に謝って欲しい訳じゃないさ。 ただ、俺は使える物は何でも使うだけだよ?例え自分自身でもね。 」 そう言って笑う提督の顔を執務机の灯りが照らす。 その顔は左のこめかみから左頬にかけての、酷い裂傷の痕があった。 [newpage] 「吹雪ちゃん、早くお昼ご飯に行くっぽい!」 「だ、大丈夫だよ〜夕立ちゃん。 まだ時間ならあるから。 」 駆逐艦寮の廊下を夕立、吹雪がはしゃぎながら歩く。 訓練を終えた彼女達二人は、お昼ご飯を食べに食堂へと急ぐ。 食堂は鎮守府の本館施設内にあり、駆逐艦寮からは渡り廊下を過ぎた先にある。 本館に入り、曲がり角を突き当たった先が食堂だ。 だが、吹雪と夕立は曲がり角を過ぎる直前に現れた人物を前に、慌てて顔を伏せ、道を空ける。 白い軍帽に白い軍服。 司令官だ。 だが、彼は彼女達を一切気にする素振りも見せずに執務室へと戻っていく。 しかし、そんな無愛想な司令官相手にすら、吹雪と夕立は顔を伏せながらの敬礼をする。 全ては彼女達が悪いのだから。 [newpage] 以前の鎮守府は提督の優しい笑顔と、艦娘思いの作戦から、笑い声が絶えなかった。 皆、提督を信頼し、提督も彼女達艦娘を大切に扱った。 しかし、事態は急変する。 」 「提督さぁー、魚雷で吹っ飛ばされたくなかったら近寄んないでくれないかなー」 「テートクー、何時になったら辞めるんデスカー?」 元々口の悪い艦娘のみならず、提督LOVE勢の金剛や榛名まで提督に対して暴言を吐く様になった。 次第に暴言だけでなく、暴力も加わる様になった。 通路を歩いていれば、跳び蹴り、過ぎ去りざまに殴るなど酷くなっていった。 提督はみんなの急激な変化に戸惑いながらも、問題を解決しようとした。 慌てふためき、弱っていく様は滑稽にすら思えた。 そしてある日、艦娘達は提督を司令室に呼び出した。 艦娘達と仲直り出来るならと、提督は何の疑いも持たずに司令室に向かった。 提督が司令室に入った事を確認した艦娘達は建物に対し攻撃を開始した。 空母勢は爆撃を、他の艦種達は砲撃を浴びせた。 瓦礫の山と化す司令室。 しかし、提督は九死に一生を得た。 全身に火傷や裂傷、骨折をしながらも一命は取り留めた。 万一の敵の攻撃の為、司令室は一番強固に出来ていたのが幸いした。 だが、敵に対する備えが味方からの攻撃を凌いだとは笑い話にもならなかった。 しばらくして、原因は解明された。 深海棲艦が艦娘に対する特殊電波を出したらしい。 この電波攻撃は艦娘を一種の洗脳状態にし、自身の大切なモノを憎むようになるというモノだった。 直ぐに妖精さんや大本営の技術者によって対策が取られ、事態は収束に向かった。 だが、傷跡は残った。 [newpage] 正気に戻った艦娘達は、全員が発狂するほど後悔した。 あれほど慕った提督を殺しかけたのだ、当然だろう。 大本営も、ここまでの事件になったからには艦娘全員の解体処分も止む無し!との通達を出す覚悟だった。 しかし、それは却下された。 何と被害者本人である提督が処分を差し止めたのだ。 艦娘達は只々提督に対する感謝と自責の念しか無かった。 こうなっては全員で提督に謝ろう! そして許しを乞おう。 提督が軍事病院から鎮守府へと戻って来た。 送迎の車から提督が降りる。 艦娘達は鎮守府正面に勢揃いし、出迎える。 しかし、提督の姿を見た艦娘達は息を飲んだ。 右耳は先が欠け、左腕は二の腕の途中から先が無く、顔には左のこめかみから頬にかけての裂傷が残っている。 あれでは軍服に包まれた肉体にも、言葉に表せない程の傷が有るだろう。 まず秘書艦であった長門が代表して、提督に謝罪する。 長門に続いて他の艦娘達も謝罪した。 しかし、それに対する提督の反応は、 「別に大した事じゃない。 ただの男がくたばり損なっただけだ。 」 と、言い放つと執務室に歩いて行ってしまった。 艦娘達は、何事も無かった様に行ってしまった提督に対して、どう接して良いのか分からなかった。 [newpage] 皆、提督に褒めて貰いたくて、戦闘では頑張った!大破しながらも姫級を沈めた!しかし、返ってきたのは、 「大破なんかするな。 」 の、一言だった。 始めは心配してくれてるのかと思ったが、淡々と 「後の作戦に支障が出る。 」 提督の冷たい視線。 この時、艦娘達は理解した。 彼は、ただ自分達に関心が無いのだと。 好きの反対は嫌いでは無く無関心。 この言葉は残酷だが的を得ていた。 「テ、テートクはケッコンカッコカリには興味は無いのデスカ?」 「悪いな、左腕が先から無いんだ。 指輪なんぞ着けられん。 」 「た、玉子焼き作ってきたの。 た、食べりゅ?」 「悪いな、玉子焼きは入院中の病院食を思い出す。 下げてくれ。 」 「て、提督。 」 艦娘達はどうして良いのか分からなくなった。 別段、酷い作戦や遠征を押し付ける訳では無い。 極めてクリーンな艦隊運営だった。 罵倒された方がまだ良かった。 殴ってくれても良かった。 提督は只々関心を持たなかった。 しかし、転機が訪れる。 ある日、榛名が敵戦艦と凄まじい砲撃戦を行った。 その時の榛名は、何処かおかしかった。 提督に相手にされず、自身の存在すら否定されたようで、どうせならばと敵戦艦と刺し違えるつもりで戦いに臨んだのだろう。 提督の撤退命令を無視し、単身敵艦と殴り合いの砲撃戦を行った。 しかし、危機一髪の所で僚艦であった比叡の援護により沈まずに済んだ。 しかし、榛名の行動は提督を幾らか動かしたのだろう。 鎮守府に帰投すると、 「撤退しろと言ったのに、どういうつもりだ!」 あれ程淡々と冷めていた提督が、榛名の轟沈未遂に声を荒げたのだ。 続いて、 「比叡!修復剤を使っても構わん! 入渠させろ!榛名の負傷を癒せ!」 提督自ら、艦娘の名を呼んだのだ。 名指しで呼ばれた比叡は勿論、榛名も嬉しさで目に涙が滲んでいた。 (元々優しいお方なのだ。 もう少し時間を掛ければきっと元通りになれる筈だ。 ) 艦娘達は小さな希望を見出した気がした。 [newpage] しかし、彼女達の考えは裏切られる事になる。 深海棲艦がある泊地に集結しつつある、という報が届いたのだ。 大本営より早急に撃破せよ!と、任務が降りた。 提督は秘書艦の長門を執務室に呼んだ。 「明日の日の出、深海棲艦はある方向を一斉に目指す。 此方は艦隊を二つに分け、待ち伏せ、十字砲火を浴びせろ」 というものだった。 長門は尋ねる。 「明日の日の出?一斉に?それは何故ですか?」 長門の問いは最もだ。 しかし、提督からの返事は 「必ず来る。 信用出来んか?」 出来ないなどと言える訳がない! 長門はただ了解と敬礼すると、執務室を出た。 」 長門の疑問は尽きないが、自分達は提督の信頼を得る為に尽くすしかない。 そして、日の出。 長門達の二つに分けられた艦隊は敵艦隊が一斉にある方角へと移動をするのを確認した。 後は行動に移すのみ! 全艦隊!攻撃開始!敵を撃滅しろ!」 二つの艦隊は攻撃を開始する。 戦艦、空母、重巡軽巡、駆逐艦。 全ての攻撃が交差する。 この待ち伏せ攻撃は完全に成功した。 敵艦隊は全く反応出来ず沈んでいった。 [newpage] だが、空母赤城の飛ばした攻撃隊の一機が小型の高速艇を発見する。 ボロボロに破損、汚れてはいるが、人間用の高速艇だ。 まだ動いている。 赤城は攻撃隊からの報告を受けて、長門に知らせる。 爆煙と砲煙の中から出てきたのは、軍用の高速艇だった。 そして艦娘達は中から出てきた人物に驚愕する。 「どうやら敵は全滅したようだな。 此方は一切被害なし。 大成功じゃないか。 」 高速艇から顔を出したのは提督だった。 白い軍服は黒く煤汚れていたが、怪我は無いようだ。 それに対しての返答は、 「俺が奴らを釣るエサになった。 そして、お前達の攻撃地点まで誘導した。 それだけだ。 」 いつものようにただ淡々と提督は言ってのける。 その直後、多くの駆逐艦や軽空母達が腰を抜かしてしゃがんでしまう。 そしてある者は青ざめ、幼い駆逐艦達は泣き出した。 それはそうだ。 自分達で提督を深海棲艦諸共殺しかけたのだ。 一部の戦艦や空母達が提督に食って掛かる。 単純な話だ。 」 と。 そして、艦娘を見渡し続ける。 「『あんな奴でも役に立つ時ってあるのかしら?』だったかな?誰のセリフか忘れたが、どうかな?役に立っただろ?」 艦娘達はここでようやく理解した。 彼は自分達に関心が無いんじゃない! この世の全て、自分自身にすら関心が無いのだ、と。 [newpage] 何の犠牲も出さずに敵艦隊を全滅させた提督に対し、大本営は勲章を授けた。 しかし、提督は執務机の引き出しにそのまま放り込んだ。 提督は軍人としての名誉すら、必要としていなかった。 それからも作戦は続いた。 提督の作戦自体は単純だ。 敵に対し、提督が自分達の近くの海域を通過するらしい。 という情報を流せば良いだけだ。 面白いぐらいに喰い付く。 」 ある者は砲を向けるのを涙を流しながら行い、 「ぜ、絶対にあの方には当てられない! タ、タイミングを見計らってやれば、だ、大丈夫。 」 ある者は自身に言い聞かせる様にブツブツと呟く。 何度も提督には、艦娘全員で思いとどまる様に嘆願した。 だが、提督の返事は決まって 「『役に立つ時がくるのかしら、このクズ!』だったかな?霞。 どうだい?俺は役に立っているだろう?」 それを聞いて霞は泣き崩れ、艦娘達は全員が黙る。 かつての自分達の発した言葉が、そのまま返ってくる。 提督をここまで追い詰めたのは自分達だ。 その中で、提督に引き合いに出された霞の瞳は、薄暗く染まりつつあった。 」 霞はフラフラと、港へと向かう。 茫然とする艦娘達は、霞一人居なくなった事に気付かない。 空に暗い雲が広がりつつあった。 [newpage] カーテンで仕切られた薄暗い執務室。 この部屋の主である提督はかつての戦時記録を見ていた。 手探りで始めた艦隊運営。 失敗を繰り返しながらも、敵泊地を攻め落とした。 提督の持つ記録ファイルには、祝勝会を開いた際の写真が収められていた。 写真の中の自分は艦娘達に囲まれ幸せそうに笑っている。 今の自分はもう笑い方すら忘れてしまった。 彼自身、彼女達が悪い訳では無い事は分かっている。 全ては敵の策略であると。 」 すると、執務室のドアを慌ただしく叩く音がする。 返事をすると駆逐艦の朝潮と秘書艦の長門がいた。 二人の顔色は蒼白だ。 何かがあったらしい。 」 普段の朝潮とは違い、今の姿は儚く、今にも倒れそうなほど動揺している。 提督はいつもの冷めた口調に戻る。 「何かあったのか?報告は的確に行え。 」 長門が提督の目を見ながら報告する。 「先ほどから霞が見当たりません。 」 長門の報告に提督は窓へと近付くと、 カーテンを開けて空を見る。 黒い雲が広がりつつあった。 提督の長年の海での生活からこの天気は荒れる!と、直感が告げている。 「提督!早急に捜索部隊の派遣許可を!」 長門は提督の背に声をかける。 朝潮も只々、頭を下げて懇願する。 「お願いします。 霞を!霞を助けて下さい!」 提督は瞑目する。 俺が霞を追い詰めたのか、当然か。 あんな態度を取っていれば、耐えられない奴だって出てくる。 何故だろう、何も満たされない。 艦娘をジワジワと追い詰めた自覚があり、達成された。 だが、無性に自分自身に腹が立つ。 ふと、机に置いたままになっていた記録ファイルが目に入る。 祝勝会の写真には、姉妹艦に囲まれている霞が写っていた。 [newpage] 『何やってるのよ?執務記録ならこの棚よ!ホントにノロマなんだから。 』 『し、仕方ないだろ。 こういった細かい作業、元々得意じゃねーんだよ。 』 『言い訳をしない!このクズ! どこの鎮守府でもこなしてる事よ! さっさと終わらせなさい!』 『わ、わかってるよ。 それに霞にも手伝って貰ってるし、すぐに終わるだろ。 ありがとう、いつも助かってるよ』 『べっ、別にたまたまヒマだっただけだしっ!それにノロマのアンタじゃいつまで経っても終わらないでしょっ! 仕方なくよ、仕方なく!』 『はいはい。 』 『返事は一回!』 提督は海を見つめる。 波が少し荒れてきていた。 「提督!どうかお願い致します!」 長門と朝潮は揃って頭を下げる。 長門は提督の返事を待った。 そして、 提督は目を見開いた。 「長門っ!空母を始めとした、艦載機を飛ばせる者を捜索に当たらせろっ! 航空戦艦も呼び出せっ!広範囲を捜索しろっ!」 提督の言葉に長門は安堵し、朝潮は涙ぐむ。 「了解した!直ちに艦隊を派遣する!」 提督の霞捜索が発令され、艦娘達は行動を開始する。 提督は館内放送で呼びかけた。 「霞が行方不明になった。 みんな、すまない!力を貸してくれ!」 緊急事態なのだが、皆は何故か泣きながら笑っていた。 自分達の提督が戻ってきたと。 [newpage] 「コンナ所ニ一人デ来ルナンテ、ヨホド自信ガアルノカ馬鹿ナノカ。 」 霞の目の前には、戦艦棲姫が蔑みの籠った視線を向けて立ち塞がっている。 霞は既に満身創痍と言っていいほどの損傷を負っていた。 主砲は曲がり、魚雷も撃ち尽くした。 最早、立っているのも不思議なくらいだ。 霞に砲を向けて薄く笑う。 霞は目を閉じ、誰に聞かせる訳でもなく「ゴメンなさい」と、呟いた。 すると霞の眼前で、爆発音がした。 霞はそっと目を開くと、戦艦棲姫が忌々しげにある方向を睨みながら、肩を抑えて呻いていた。 霞は視線の先を見る。 其処には赤城に加賀、長門に朝潮、摩耶と日向もいた。 摩耶が叫ぶ。 「ウチのモンに好き勝手やってくれたみてーじゃねぇか!ブッ殺されてーか!」 「鎧袖一触よ。 」 「一航戦の誇り、お見せします!」 「殴り合いなら私を忘れて貰っては困るな!」 「霞!今、助けるからね!」 「航空火力艦の力、見せてやる。 」 ここで完全に攻守が逆転した。 [newpage] 長門達は損傷の酷い霞を曳航しながら、帰途についていた。 霞は勝手な事をしたと落ち込んでいる。 そこに摩耶が声を掛ける。 「クヨクヨすんなよ。 そもそもお前を探せって言ったの、提督だぜ? 心配こそすれ、嫌ってなんかいねーよ。 」 長門も同意する。 「そうだ。 私と朝潮が捜索を依頼した時、提督自身、自分の行いを悔やんでいた。 大丈夫。 今の提督はかつての提督だ。 」 霞は顔を上げ、 「本当に?」 摩耶はニヤッと笑うと、鎮守府を指差した。 「見てみろよ。 港にでかい図体で、心配そうにウロウロしてやがるから。 」 [newpage] 「提督さん!夕立MVP取ったっぽい! 褒めて褒めて〜。 」 執務室で夕立が提督に甘えている。 「おう!報告書読んだぞ〜。 よくやったな〜。 」 夕立を膝に座らせ頭を撫でる。 本当に犬のようである。 霞を連れ帰った艦隊を、提督は出迎えた。 そして、霞に深々と頭を下げて謝罪した。 そして全員を会議室に集めると、皆の前でも頭を下げた。 『すまなかった。 ガキのようにいじけていた。 艦娘達も自分達もと謝り、謝罪合戦になりかけた所で、流石に止めた。 それから提督は、かつての提督へと戻った。 「資材の減りがヤケに早いな?長門、赤城と加賀にそれとなく注意しといてくれ。 多分あいつらだ。 え〜と、次は何々?『夜戦をもっと増やせ!』。 匿名にしても誰が書いたかすぐ分かるな。 神通に川内をシメるように言っといてくれ。 『カレーを作りました。 食べに来て下さい。 比叡』却下だ!却下!誰だ厨房に比叡を入れたの! 妖精さんに頼んで鍵を掛けられるようにしといただろ? えっ、壊して入った?不法侵入じゃねーか!」 提督は集められた艦娘達の要望書へと目を通していた。 そして独りごちる。 「最近やたらと、要望書が増えた気がするな」 それもその筈。 艦娘達は今まで提督に構ってもらえなかった分、やたらと甘えてくるのだ。 最も、提督も本気で嫌がっているワケでもない。 「ヘーイ!テートクー!tea timeにしまショー!」 金剛がtea セットを持ちながら執務室に入ってきた。 「お、もうそんな時間か。 喉も渇いたし、お願いするよ。 」 金剛は歌を口ずさみながら、紅茶を淹れてくれる。 提督は以前の殺伐とした鎮守府の雰囲気よりも、コッチの方が良いなと実感していた。 今も夕立を膝に乗せながら、長門を秘書に、そして金剛に紅茶を淹れて貰う。 幸せな時間であった。 すると、ドアを誰かがノックする。 返事をすると、大本営との連絡要員でもある大淀がいた。 「提督、大本営より査察官殿がお見えになっております。 お通ししてくれ。 」 執務室に少佐の階級章を付けた将校が入ってきた。 「大本営より来ました。 」 提督はソファーに対面する形で向かい合う。 後ろには秘書艦の長門、夕立、大淀、そして査察官の分の紅茶を淹れた金剛が控えた。 要約すると、この鎮守府の様子を見てくる様に。 と派遣されたらしい。 「ですが、安心致しました。 ここに来るまでの間に艦娘達を見かけましたが、皆、楽しそうに過ごしていたので問題無さそうですね。 」 提督はやはり来たかと思いながらも表情には出さない。 「ええ。 皆とても素晴らしい者達ですから助かっていますよ。 それと問題無いとは?」 其処で査察官も続ける。 「いえ、万一艦娘達との関係修復が難しい様で有れば、直ちに提督を保護せよとの命が降りていましたが、どうやら取り越し苦労だったようですね。 」 「何と!そうでしたか。 ですが心配は要りません。 彼女達との関係は良好ですしね。 」 提督の返事に査察官も安心したようだ。 その表情は青ざめて顔色が悪い。 」 査察官は提督の後ろに視線を向けている。 提督は訝しげに振り向くが、背後には長門に夕立、金剛に大淀がいるだけだ。 皆、提督にニッコリと笑みを向けてくる。 かわいい。 「査察官殿。 大丈夫です。 お気遣いなく。 そ、そろそろ失礼致しますっ!」 来訪してからニ十分も経っていない。 どういう事だ? 「えっ、もうそろそろ昼食の時間ですから良ければ召し上がっていっては? 我が鎮守府の鳳翔の腕は並みの料理人以上ですよ。 」 しかし、査察官は慌てて返事をする。 「いっ、いえ、此方も様々な案件を抱えてましてっ! これで失礼させて頂きますっ!」 キョトンとした提督を尻目に、査察官は部屋のドアへと向かう。 早く此処から逃げたくて仕方ない。 しかし、 「では提督。 私がお見送りしてきますね。 」 声を上げたのは大淀だ。 それに対して提督は、 「ああ、頼むよ。 では、査察官殿。 お気を付けて。 」 査察官は叫びたくなった。 [newpage] 執務室から正面玄関までの道のりを査察官は大淀の後に続いて歩く。 あの時。 提督と対面で座っていた時。 自分が提督を保護するという発言をした瞬間、提督の後ろに控えていた艦娘達が凄まじい殺意の籠った視線を向けてきた。 あの瞬間に自分は死を覚悟した。 大淀は此方を見ずに話し出す。 」 そう言って大淀は此方を振り向く。 暗く濁った瞳。 査察官は恐ろしくて仕方なかった。 冷や汗が噴き出る。 気付けば通路には自分と大淀しかいない。 しかも、来た時には外から聞こえていた駆逐艦の子達の声がしない。 静かだ、不安になるくらいに。 しかし、背後から何か視線を感じる。 ゆっくりと後ろを振り向くと、 ズラリと艦娘達が並んで自分を見ていた。 誰もが皆、濁った瞳をしている。 査察官は叫び声をあげそうになりながらも、後ろへと後ずさる。 査察官の肩に手が置かれた。 「大本営には、上手く、言っておいて下さいね。 」 査察官は何度も頭を振り了承した。 「それでは、道中お気をつけて。 」 艦娘達に見送られ査察官は正面玄関から逃げる様に早足で駆け出す。 鎮守府前に駐車中の車の後部座席に飛び込んだ。 運転手として待機していた武官が驚いて運転席から振り向く。 査察官は車の窓から鎮守府本館を見やる。 口元に笑みを浮かべている者もいるが、目は笑っていない。 その後、査察官は逃げる様に鎮守府から去って行った。 査察官は思った。 「私はまだ生きていたい。 死にたく無い。 」 「しかし、査察官って仕事も忙しないんだな。 あんなにバタバタして。 」 提督は金剛が淹れてくれた紅茶を飲みながら、溜息を吐く。 「まあまあ提督。 それよりそろそろ昼食にしましょう。 」 「ソウネー、テートク!今日は鳳翔の魚料理がオススメらしいネー!」 そう言いながら、金剛は提督の右腕にくっついてくる。 「金剛さん、ズルいっぽい! 夕立も提督さんと一緒っぽい!」 「こらこら。 歩きにくいだろ? まだ昼休みは時間あるから急がなくても大丈夫だ。 」 提督はぷりぷりと怒りだした夕立をあやしながら、食堂へと向かう。 三人の後に、秘書艦の長門が続いて執務室を後にする。 長門は前を歩く提督の背中を見つめながら呟く。 「彼は我々の導き手。 」 腕を組んで歩く金剛は、 「何処にも行かせないネー、テートク。 」 「「「もし彼に手を出すのなら、絶対に許さない。 海の藻屑に変えてやる。 」」」 それぞれ3人共、暗く濁った瞳をしながら歩いていく。 いや、彼女達だけでなく、この鎮守府の艦娘達は誰もが同じ目をしていたのだった。

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